セブ島通信 Vol.163 2018年03月号へ戻る

ゴミの山?から宝探し  

蝶谷正明

ウカイウカイという古物屋がセブのあちこちにあります。米袋に一袋いくらで仕入れてきたような?10ペソ、30ペソの古着や靴などを山のように積んで売っています。新品には手の出ない人々にとってはありがたい存在でしょう。日本でもバブルがはじけた頃から、リサイクルショップやガレージセール、フリマが流行りました。正価ではとても手が出ないもの、お店には出ていない趣味の品など様々なものが格安で入手できました。景気が良い時には他人が使ったものなんて気持ち悪いと言っていた人たちが背に腹は代えられず、しかし一度利用してみると価値観が一変して病みつきになるといった塩梅でした。セブには日本からの古物を専門に扱うジャパニーズ・サープラスというお店もいくつかあります。コンテナに閉店したお店の備品一括や引っ越し時に不要になったものをこれでもかと詰め込んで持って来ると聞いています。一時はまさにゴミとしか言いようのない片方しかない靴、縁の欠けた茶椀やスキーの板やら首のもげたお雛様なんてものが堂々と売られていましたが、最近は随分と洗練されてきたような気がします。それでも店の人が売っている商品が何だか分からないというようなことも多々あります。日本でもリサイクルショップなどにはお世話になった我々夫婦は、セブでも楽しませてもらっています。欅の和箪笥やテーブル、紫檀の座卓なんてものが数千ペソでした。しかも値切れるのがまた楽しい。ベニヤも銘木も木は木だろうという知識の欠如が私たちに幸福をもたらしてくれます。寿司飯を作る飯台(浅い木の桶)や和食器なども重宝しています。ついつい不要なものまで買い込んでしまう危険性がありますので、ご用心ください。 さて、このようなゴミの山?から宝物を探し出しているのは私たち夫婦だけではありません。セブの名門私立サンカルロス大学の文化人類学 /考古学のベルサレス博士はまさにその道のプロです。日本文化に造詣の深い博士は日本からのリサイクルショップを巡り、目に留まった古美術品、古道具から現在の日用品まで幅広く発掘しています。お雛様、陶磁器、家具から始まってキッチン用品等々、98?%は昭和戦後から平成にかけてのもので、素晴らしい古美術品というよりも子供の頃を思い出す懐かしい品々です。今後しっかり整理をしていきたいようですが、膨大な量にままならないようです。そのコレクションの中から伊万里焼の色絵の磁器が3月31日までサンカルロス大学メインキャンパス(コロン)内の博物館で特別展示されています。戦争で灰燼に帰し、戦後間もなく復興された荘重な緑とカーキ色の本校舎の中にある慎ましやかな博物館の前のオープンスペースです。建物自体を観察するのもまた、興味深いものがあります。もちろん国宝や重文、重美という逸品があるはずはありません。江戸末期から昭和末にかけての作品が多いとのことです。中には底に「大明萬歴○○」などと書かれているものがあり、まさか明朝の萬歴帝の時代に官窯で焼かれたものかとびっくりしましたが、説明書きを見ると大正時代とありました。明の時代の作品をそのままコピー、ご丁寧にも銘まで写しているのですね。一点ごとに細かい説明がつけられています。戦前戦後の輸出用のコーヒーカップなども展示されています。輸出出来るものが生糸や綿布、安かろう悪かろうの雑貨しかなかった時代、日本の陶磁器はピンキリはあれど重要な輸出産品でした。そこからノリタケや香蘭社、深川製磁といった世界的に高い評価を得る作品が生まれていったのでしょう。そのような背景を考えながら見ていくとセブの地で日本の近現代を支え、当時の人々に接してきた品々に会えることに感銘を深くしました。

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