セブ島通信 Vol.164 2018年05月号へ戻る

私のマーヨンなご近所

水野

今年もいきなり夏がやって来た。常夏の島に憧れてセブにやって来たが、長いこと暮らしていると、それでもやはり季節はあることを感じるし、夏は特別暑い。 さて、夏になると雨も降らなくなり、火災防止強化月間みたいな垂れ幕をよく見るようになるのだが、まるでそれを合図にするかのように、あちこちで火事になる。私の住むマクタン島も火事が多発している。 そういうニュースを見るたびに、決して他人ごとではない、と恐ろしくなる。火事のニュースは大々的に流れるが、いつも思うのだが、出火の原因というのが、はっきりしない。あくまでも推測の域をでないため、気の付けようがないのである。 ある日の早朝、まだ暗い時間に、姑が表で叫んでいる。姑は何でもかんでも大騒ぎするため、もはや家人や親戚、周辺に住む誰もが「オオカミ少年」ならぬ「オオカミ婆」と認識しており、誰も相手にしない。しかしこの時は、いつもにも増して大騒ぎしている。よく聞くと、「火事だー!」と叫んでいる。さすがに飛び起き、「どこ?」と聞くと、「すぐそこ!早く!早く!」というので、とるものとりあえず、外に飛び出る。すると、家の前の国道を挟んだ向こう側がメラメラと燃えていた。まだ発生したばかりらしく、消防車はまだ到着していない。誰も消火活動をしてはおらず、遠巻きに見ているだけ。火元は小さな商店の横だが、何があった場所なのか思い出せない。隣接しているホテルの客がスーツケースを持ち出し、外に逃げてきた。 火は結構な勢いに感じたが、道路を挟んでいるので、こちらまで飛び火することはなさそうだ。そのうちに近くのリゾートホテルの小さな消防車が到着し、すぐ火を消してくれた。 結局、ぼやで済み、大した被害もなかったのだが、これまた、原因がわからない。というか、誰に聞いても、原因なんてさほど興味がないようだ。このへんのフィリピン人と日本人の根本的なちがいを認識することで、日本人の日々のイライラは軽減されるのではないかと最近感じている。 結構な勢いの火もあっけないほどちゃんと消してくれる、というのを間近で見て、ちょっと安心した。だって最近の大火事は、近隣自治体の消防車総動員してもぜんぜん消せないってことが多かったから、申し訳ないけど、セブの消防に問題があるのかと思っていた。では、なぜ大火事になるのか。という疑問の答えを、私は後日、実感することになる。 ここでも何度か記事にしているが、私は、もうずいぶん前だが、現在住んでいる家から少し奥まったところに土地を購入し新居を建てることにした。しかし、フィリピンスタイルでお金がなくなり中断したら、もうめんどくさくなり、そのまま放置している。そしていつの間にか、誰が許可をしたのだか知らないけど、立派な闘鶏の養鶏場になっていて、建てかけた建造物は遺跡のような佇まいになっていた。一番最後に訪れたのは数年前で、飼い犬が亡くなったため、そこに埋めようと久しぶりに訪れると門には鍵がかけられ、自分の土地なのに、自由に入れないということになっていた。深く考えると悔しいので、なるべくこの件のことは考えるまい、とし、私の中ではすっかりなかったことになっているのである。先日、この養鶏場の隣の家に用事があり、行かなくてはならなくなった。しかし、行けなかったのである。今まで、ここをこう行けばあそこに通じる、という道が、途中で壁に阻まれていたのである。 もともとはほとんどが空き地だったのだ。それがここ数年で、家が建ち並んだ。それでも他人の軒先を通りながら、何とか通れていたのだが、いつの間にか行けなくなっていた。一度、道路に出て、ちがう道があるか探すが、それが見つからない。何度も大きな道路沿いを行ったり来たりしていたら、いつの間にかできていたビルとビルの間から人が出てくる。本当に人がやっと一人通れるような細い道だ。位置的にはまちがいない、と入っていくと、まったく見たこともないような風景が広がっていた。小道は迷路のように別れ、途中、しばらく雨も降っていないのになぜかぬかるんでいる沼のようなところがあったりして、どうやっても見覚えのあるような場所に行けない。アヤラですら毎回、迷ってしまうほどの方向音痴の私は、諦めて家に帰り、息子に道案内をさせ、ようやくたどり着いた。しかし、我が家の建てかけの家にはまた別の道を通らなくてはならないそうで、昔は隣と思っていたが、現在は、上から見れば隣ですねってことになっていた。自分の土地でありながら、もはやたどり着くことはできないかもしれない。 確かにこんなところで火事になれば、まず消防車は入ってはいけず、なすすべなく延焼していくのであろう。我が家の土地で飼われている鶏さんたちもかわいそうだが焼き鳥だ。 そう考えると、ここに家なんぞ建てなくて本当によかった。いや、決して負け惜しみではなく…

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